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「何よこれ」 その日ルイズが召喚したものは、小さな茨の冠だった。 「何が出てきたんだ?」「何も見えないぞ」「ネズミでも呼び出したんじゃないか?」 ルイズの後ろから、同級生達の声が聞こえてくる。 ゲートから召喚されたものが何なのか、見ようとしているのだろう。 ルイズは一歩前に出て、地面に置かれた茨の冠を手に取った。 よく見ると、中央に穴の開いた奇妙な鏡に茨が絡みつき、冠の様相を見せている。 なんだかよく分からないけれど、これは自分が召喚した使い魔らしい。 「ミス・ヴァリエール、どんな使い魔を召喚したのかね?」 どこまでがおでこなのか分からない教師、コルベールがルイズに近寄り、ルイズの手をのぞき込む。 「あの、これ…」 手の中にある茨の冠を見せると、コルベールは首をかしげた。 「これ?…はて、これとは、どれのことですか?」 「だから、この茨の冠みたいなものです」 「…?」 「…」 「…」 ほんの少しの間、重たい沈黙が流れたかと思うと、コルベールはぽんと手を叩いて他の生徒達に向き直った。 「えー、皆さん!そろそろ帰らねば、次の授業に遅れてしまいます、少々急ぎ足で戻るとしましょう!」 コルベールの声を聞いて、生徒達は空を飛んで、トリスティン魔法学院へと帰っていく。 ルイズを馬鹿にする言葉も少なくない、誰かは「とうとう頭がヘンになった」とまで言ってルイズを侮蔑し、飛び去っていった。 「ミス・ヴァリエール、召喚が失敗したからと言って意地を張ってはいけません、さあ、もう一度やり直しましょう」 「え…」 優しく語りかけるコルベールの笑顔が、ルイズにはとても残忍なものに見えた。 コルベール先生の指導の元、サモン・サーヴァントを何度もやり直したが、ルイズの前に使い魔を呼び出すゲートは現れなかった。 ルイズは何度も茨の冠のようなものを指さし、これが呼び出されているからゲートが開かないのだとコルベールに説明した。 だが、コルベールは気の毒そうにルイズを見ると、今日はもう疲れているのだから休みなさいと言って、魔法学院に帰るよう促した。 そこでルイズは気づく、この茨の冠はコルベール先生に見えていないのだと。 「先生!違います、本当に私、使い魔を呼び出したんです、この茨の冠みたいなものを、持ってください!」 ルイズはコルベールの手を取って、その上に茨の冠を載せる。 だがそれはコルベールの手を通り抜け、地面に落ちてしまった。 「…!」 呆然とするルイズを見たコルベールは、ルイズが意地を張り過ぎて混乱しているのだと考えた。 空を飛ぶことの出来ないルイズは、魔法学院に歩いて帰るしかない。 混乱状態の生徒から目を離す訳にはいかないので、コルベールはルイズと共に歩いて魔法学院へと戻ることにした。 ルイズは茨の冠を胸に抱き、部屋に戻ろうと歩いていた。 その途中キュルケとすれ違い、この茨の冠は他人には見ることが出来ないと、改めて認識することになった。 「あら、ヴァリエール、胸に何か抱いてどうしたの?」 「…”何か”って、ツェルプストーは、これが見えるの?」 「これって、どれのことかしら」 キュルケは、胸の前で交差させたルイズの腕をのぞき込む、だがそこには何もない。 胸すら無い。 「何にも持ってないじゃない、あんた大丈夫?」 「見えない…の?」 「?」 部屋に戻ったルイズは、茨の冠を手に持ち、考える。 これは一体なんだろう? 他の人には見ることも出来ないし、触れることもできない。 ルイズからは見ることができ、触れることもできる。 訳が分からなかった。 やたらにルイズのことを心配し、魔法学院まで付き添って歩いてくれたコルベール先生。 彼はきっと、サモン・サーヴァントに失敗たと思いこんでいるのだろう。 使い魔がいないメイジは二年に進級できない、つまり、明日の授業は皆と一緒に受けることもできず、一年生と一緒に授業を受けることになる。 けれども、自分は確かにこの茨の冠を召喚した。 誰にも認めて貰えない使い魔。 ルイズは笑った、だが、それは自虐的な笑いだった。 何年も何年も、魔法が成功しない、ゼロのルイズと蔑まれてきた結果が、誰にもその存在を認められない使い魔。 本当に自分にはお似合いだと、泣きながら笑った。 ルイズは茨の冠を手に取り、鏡の前に立つ。 これを被ったら、どんな格好になるだろう、花の冠ではなく茨の冠なんて、自分にはお似合いかもしれない… そう考えながら、ルイズは茨の冠を頭に乗せた。 『ハ ー ミ ッ ト ・ パ ー プ ル ! 』 ぱっ、と頭の中で何かの声が響く。 ルイズは咄嗟に部屋の中を見回したが、自分以外だれも居るはずがない。 だが、確かに聞こえたのだ、『ハーミット・パープル』と。 改めて鏡を見ると、頭に乗せたはずの茨の冠が消えていた。 これが後に『ゼロのルイズ』を『ゼロの茨』と名を変え、『虚無の茨』として恐れられる運命の第一歩だとは、本人ですら気づいていなかった。 続かない。
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++第九話 使い魔の決闘③++ 花京院はゆっくりと身体を起こした。 身体の節々が痛む。特に右腕の痛みが酷い。 しかし、立つことはできた。 それを阻止するはずのゴーレムは立ちすくんでいる。 主からの命令が来ず、どうすることもできないのだ。 ギーシュは自分の喉を押さえ、目を白黒させていた。 「どんな気分だ? 自分の中に何かが入っているっていうのは」 「……!」 目を見開き、ギーシュは必死に訴えるが、その声は出ない。 花京院はギーシュからバラを取り上げた。 バラの造花が魔法の杖だったようで、ゴーレムたちは次々と土に戻り、土の山だけが残った。 「さて、僕は考える。これから『お前をどうするか』をな」 「……」 「今、お前の中には僕のスタンドが入っている。僕の意のままに動き、お前を殺すことができる力だ」 花京院の言葉に、ギーシュの顔が青くなる。 「このままお前を操って自分の首を締めさせようか。それとも内側から風穴を空けようか。いっそこのまま内側から破裂させるという考えもある。……しかし、このまま殺すのを決闘とは呼べないな」 スタンドを操作し、ギーシュの右手を差し出させた。 その手のひらにバラを置き、握らせる。 ギーシュは理解不能というように、花京院を見た。 「剣を二本作れ。それ以外に何かしたら殺す」 花京院の本気を感じ取ったようで、ギーシュは身震いした。 恐怖に震えながらも、バラを振る。 すぐ側の地面が盛り上がり、二本の剣が現れた。 ギーシュに剣を握らせてから、距離を取らせた。 互いの距離は三歩ほど。一歩踏み込めば剣が届く程度の距離だ。 「お前は剣を握ったことがないだろうし、戦いの経験も浅いだろう。一方、僕は戦いには慣れているが、身体がもう限界に近い。今の僕とお前なら対等だと思わないか?」 「……」 ギーシュは無言のまま握った剣と花京院の顔を見比べた。 彼の顔には今までの余裕の笑みも、からかいもなかった。真剣勝負への恐怖と、もう一つ別な感情がそこにはあった。 エジプトでDIOの館に乗り込むとき、全員が持っていたもの。 DIOとの最後の戦いのとき、花京院が持っていたものと同じものだ。 力量の差がはっきりしていても、それがあれば戦える。 絶望的な状況でも、それさえあれば希望が見出せる。 それを言葉にするのならば――“勇気”。恐怖を克服する力だ。 ……なかなか、いい顔になってきたじゃないか。 ギーシュは敵であり、ルイズを侮辱した相手に違いはない。しかし、花京院は少しだけ敬意を払うことにした。 目の前に突き刺さった剣の柄頭に手を置き、花京院は高らかに宣言した。 「我が名は花京院典明。我が主、ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールの誇りのため、そして、傷つけられた二人の少女のため。ギーシュ・ド・グラモン、お前に敗北を味わわせてやる」 ギーシュは震える手で剣を握り、構える。 花京院も左手で剣を掴んだ。 その瞬間、左手に刻まれたルーン文字が輝き出した。 花京院とケンカし、部屋に戻ったルイズは落ち込んでいた。 ベッドの上に仰向けになり、天井を眺めながら呟く。 「なんであんなこと言ったんだろ……」 あの時、魔法について質問され、怒ってしまった。 自分をゼロのルイズだと馬鹿にしているんだと思った。 前の授業でも失敗していたから余計に傷ついてしまった。 でも、あいつは知らなかったんだろう。魔法のことも、たぶん今日始めて知ったはずだ。 自分の知らないことを質問する、そんな当たり前のことを怒ってしまった。 「……はぁ」 ため息ばかりが口から漏れる。 謝りに行こうかとも考えたが、自分のプライドが許してくれない。 使い魔に頭を下げるメイジがどこにいる。使い魔はメイジの下僕。向こうが謝るのが道理というものだろう。 ルイズは起き上がり、腕を組んで考えた。 謝るべきか、謝らないべきか。 悩んだ結果――ルイズは立ち上がった。 「よ、様子を見るだけ。ただ、様子を見に行くだけよ。使い魔の管理はメイジの仕事だからね。それを怠るのはメイジとしてどうかと思うし」 誰に言うでもなく言い訳をして、ルイズは部屋を出た。 その時、目の前を二人の生徒が横切った。 「あのギーシュが決闘? 本当かよ。相手は誰?」 「平民だって聞いたぜ。あのゼロのルイズが召喚した使い魔だって」 「ちょっと待ちなさい!」 思わず、ルイズは呼び止めた。 怪訝な顔で二人は振り返り、ルイズの顔を見て目を見開いた。 そんなことには一切構わずに、ルイズは尋ねる。 「私の使い魔が……なんだって?」 「い、いや、今のは別にお前を馬鹿にしてたわけじゃ……」 ルイズの勢いに気圧され、一人が慌てて弁解しようとする。 「そうじゃない。私の使い魔が、ギーシュと、何をするって?」 「あ、ああ。聞いただけなんだが、どうも決闘するらしいぜ。お前の使い魔とギーシュが」 「……場所は?」 「ヴェストリの広場。ひょっとしたらもう始まってるかも……」 終わりまで待たず、ルイズは走り出していた。 こんなことなら、離れるんじゃなかった。 失態を悔やみ、自分を責める。 メイジと平民では勝負にすらならないだろう。 いくら相手がドットのギーシュだとしても、それは変わらない。 それだけの力の差がメイジと平民にはあるのだ。 初撃で、諦めてくれるならいい。 負けを認めて、すぐに引き下がるならいい。 それなら少しの怪我だけで済む。 でも、あいつはきっとそうしない。 ボロボロになっても、負けを認めないだろう。 たとえ絶対に敵わなくても、戦いを続けるだろう。 きっと、死ぬまでそうするつもりだ。 あの使い魔はそういう奴なのだ。 短い付き合いでも、ルイズにはそれがわかっていた。 だからこそ、急がなければならない。 生意気で、物分りがよさそうなくせに、ここぞというところで意地になる。 主人に従順であるべき使い魔としては失格だが、それでも生きていて欲しい。 ……無事でいなさいよ。 祈りながらルイズはひたすら走った。 To be continued→
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「ちょっと……何やってんのよ?」 「見て分からねーか」 「わたしが聞いてるのは主人を待たせて何やってんのってことよ!」 その言葉を完全にガン無視決め込み髪をブラシで整える。 プロシュートもイタリア人である。故に身だしなみには当然気を使う。 ちなみに兄貴『パッショーネ モテる男ランキング』の常に上位に君臨している(メローネ調べ) なお、最下位は5年連続してポルポがブッチ切りだ。(理由:包み込んでくれそうというより潰されそう 常に何か食ってる ・・・etc) それを終えたプロシュートがルイズの前に常人には若干関節に負担があるような立ち方で立つ ルイズの耳に ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨┣¨ というような音が聞こえたような気がしたが関わると良いことが起こりそうにないので深く突っ込まない事にした。 食堂に向かいルイズが中に入る、だがプロシュートは入り口の前で止まっていた。 「どうしたのよ?」 「……オレはいい」 主従関係を教えるための朝食を用意していたルイズであったが本人が食べないというのでは意味がない。 「食べないのは勝手だけど後で欲しいって言っても知らないわよ」 何とか食堂に連れて行こうとする。 もっとも、ルイズが用意したプロシュートの朝食内容を見れば食堂内で即グレイトフル・デッド発動ということになり大惨事になっていただろうが。 「いいからさっさと行け……」 ルイズが食堂に入ったのを見届けるとプロシュートが壁に背を預け目を閉じる。勿論寝ているわけではない。 夢だ。あの夢が妙に気になっていた。 チームの仲間達の死体の目。あの姿と視線がフラッシュバックとして脳内に蘇りとてもじゃあないが朝食を摂る気にはなれなかった。 いや、それだけならまだいい。「ソルベ、ジェラード、ホルマジオ、イルーゾォ」ヤツらはボスを倒すと誓ったその日から覚悟はしていたし死んだ事も知っている。 だが「ペッシ、メローネ、ギアッチョ、リゾット」は別だ。ヤツらはまだ死んじゃあいない。何故ああもリアリティ溢れる夢を見たのか気に掛かっていた。 「メローネ、ギアッチョ、リゾット」に関しては腕が立つ連中だしあまり心配する事もないが気掛かりなのは弟分のペッシだ。 自分があの状況下から居なくなったという事は「老化の解除」即ち亀の中の連中の復活を意味する。 ペッシのビーチ・ボーイは1対1向けの能力だ、グレイトフル・デッドのように複数人を相手にするのには向いていない。 おまけにあの夢の中のペッシのやられ方はブチャラティのスティッキィ・フィンガースの攻撃にやられたものと同じだ。 その事が自然と彼に朝食を摂らせる気を失せさせていた。 (成長してりゃあいいがな…) 「……るのかい?」 声が聞こえプロシュートが目を開き周囲を見る。 そこには、ここの生徒と思われる男が少女を連れて立っていた 「聞こえているのかい?」 「何か用か?」 「まったく…聞こえているじゃないか、ミス・ヴァリエールが召喚した『平民』の使い魔だったね。道を開けてくれないか」 『平民』という部分を若干強調して男が話す。 だがプロシュートは壁に背を預け立っているので、人が通るスペースなど十二分にある。 「……通りたけりゃあ通りゃあいいじゃあねぇか」 「分からないかい?君は平民なんだから貴族に道を譲るのは当然じゃないか」 思わず蹴りを入れそうになるが、一応ルイズから騒ぎを起こすなと言われているため無言で道を開ける。 それを見た男が満足気な顔で少女を連れ食堂に入っていった。 もちろん、このままではプロシュート、いや暗殺チームとしての沽券に関わる。 男が食堂に入る前にグレイトフル・デッドで男の財布を抜き取っておいた。 数時間後騒ぎになるが犯人は誰か分からないままであった。(後のギーシュ財布盗難騒動である) 朝食を終えたルイズが授業を受けるべくプロシュートと共に教室に向かう。 この朝一の授業はサモン・サーヴァントの初めての授業。つまり皆が己の使い魔を披露する場も兼ねている。 その中にただプロシュートが立つ。ハッキリ言って浮いている、そりゃあもう浮いている。ジャンピン・ジャック・フラッシュを食らったかの如く浮いてる。 壁に背を預け腕を組みながら立つその姿はどう見てもヤクザです、本当に(ry ざわ……ざわ……ざわ…… ざわ……ざわ……ざわ…… 生徒がざわつき始めるがその内容は殆どプロシュートとルイズに対してのものだ。 その中に明らかにプロシュートに対して脅えているものが2~3名。初日のグレイトフル・デッドの広域老化攻撃に巻き込まれた連中だ。 話の内容から察するに他の生徒達からは「夢でも見てたんじゃあないか」とか「平民がそんな事できるわけない」とか言われているようで 本人達も気付けば特に異常は無いらしく夢あたりと思いたいらしいがやはり兄貴の平民にあるまじきプレッシャーが怖いらしい。 そんな中『ゼロのルイズ』という単語が聞こえる。プロシュートがルイズにそれがどういう意味か尋ねてみるが (アンタには関係ないでしょ!) という目で思いっきり睨み返される。 そうこうしているうちに授業が始まるがプロシュートには全く興味が無い事なのでほとんど話を聞いていない。 唯一、シュルヴルーズと呼ばれる教師が石を金属に変えた時はそれを見ていたようだが。 そして、ルイズが教師に呼ばれ前に出る。生徒達のざわめきがプロシュート達が教室に入ったものより大きく続々と生徒達が机の下などに退避する。 ルイズが詠唱を始め石に杖を向ける。だがプロシュートの背筋にゾクリと冷たい物が走る。 亀に直触りを仕掛けようとし、列車の天井にジッパーを付けたブチャラティが自分を攻撃しようとした時のように。 瞬時にグレイトフル・デッドを発現させ一気に教室の後ろまで下がる。机の下は生徒達とその使い魔で一杯で入る余裕は無い。 後ろに行きスタンドを構えさせた瞬間―――『爆発』が起こった。 色々な破片がプロシュートに飛んでくるが全てグレイトフル・デッドで迎撃する。精密動作がニガテとはいえこの程度の物を落とすのは訳はない。 机の下に隠れてたとはいえ爆風まで完全に遮断できず、生徒達が若干ススに汚れたまま這い出てくる。 一応自身を見るがスーツに傷や汚れは無い。オーダーメイドであり体に完全に馴染むものはこれ一着しか無い。汚れはともかく傷だけは御免だ。 スス塗れの生徒達からルイズに明らかに非難と侮蔑の視線と言葉が集まる。当のルイズは下を向き若干震えたようにしている。 だが、プロシュートが抱いた感想は生徒達の物とは違っていた。 (隠密行動や暗殺には向かねーが、大した威力じゃあねーか) あくまでギャング的な思考である。 授業終了後、殆どの全ての生徒が出て行った教室でルイズとは対照的な女とルイズが激しくガンを飛ばしまくっていた。もっともほとんどルイズが一方的にではあるが。 「また派手にやってくれたもんねぇゼロのルイズ」 「きょ、今日は少し調子が悪かっただけよ!」 「あら、今日じゃなくて何時もの間違いじゃない?」 など口論している、ところにプロシュートが割り込む。 「聞きてぇんだが『ゼロのルイズ』ってのはどういう意味だ?」 「あら…あなたがルイズの召喚したっていう平民ね。…結構シブくて良い男じゃない」 「フン…で、オレは『ゼロのルイズ』って意味を知りてぇんだが」 「だから、アンタには関係ないって――ひょっほあにふんほよ!(ちょっとなにすんのよ!)」 女がルイズの口を押さえてプロシュートの問いに答え始める。 「なるほどな、あの爆発は魔法に失敗した結果って事か」 「そう、今までの魔法が100%失敗してるから『ゼロ』って事よ」 「あらもう、こんな時間。先に行ってるからこれからも頑張んなさいよゼロのル・イ・ズ♪」 「~~~~~~~ッ!!」 からかうようにして言い放つ女に対し怒りが限界を突破して声にすらなっていない。ルイズ火山噴火一歩手前というところである。 ・・・ だが、次の瞬間プロシュートが取った行動は―――意外ッ!それは肘撃ちッ! バギィ! 教室に響く鈍い音 若干手加減されていたとはいえ現役ギャングの攻撃である。女は思いっきり床に倒れていった。 ルイズとその女、双方とも何が起こったのは分からないといったような表情だ。先ほどまでの喧騒が嘘の様に静かになっている。 「使い魔…それも…平民が!名誉あるツェルプストー家の…この『微熱のキュルケ』に何てことをッ…!!」 ルイズの方はまだ何が起こったのは理解できていない様子で倒れているキュルケを見たまま動けないでいる だが、プロシュートはそんな事に構いもせず倒れている女―キュルケに近寄り言い放つ。 「オレの世界ではなッ!侮辱するという行為は殺人すら許さていると言ったヤツが居るッ! いけすかねぇ豚野朗だったがそいつのその言葉だけは一理あったッ!今ッ!オメーはそういう事をこいつにやっているんだぜッ!」 プロシュートの迫力に何も言えなくなるキュルケ、そしてプロシュートが自分が『ゼロのルイズ』と呼ばれていた事に対してキュルケを殴った事に気付く。 (え…こいつが怒ってるのってわたしが『ゼロのルイズ』って呼ばれて、侮辱されたからって事…?) さらにヒートアップするプロシュートの説教。チーム内でもペッシ、メローネ、ギアッチョに対しての説教の多さは有名になっていたりする。 まぁメローネとギアッチョは大して聞いていないため実質ペッシだけであるが。 「行くぜルイズッ!」 ギャングとしての説教を終えルイズを呼び教室を去るプロシュート。呼ばれた方は初めて自分の名前が呼ばれた事もあってマトモな返事も出来ず付いていく。 そして一人教室に残されたキュルケ。何も言えなかった、何も言えるはずがなかった。 「平民が…!この『微熱のキュルケ』に…!許せない…!許せない…!」 そう呟く。だが次の言葉で何も言えなかった理由が判明する。 ・・・・・ 「……許せないぐらい『燃えてきたわッ!』」 微熱のキュルケ、その二つ名の本領が発揮された瞬間であった。 戻る< 目次 続く
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336 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 22 10 49.67 ID gckj6eAy0 ~次の日~ / __ ̄`ヽ { ヽ / ゝー { { ゝ= __ ゝ ′ ` 、 / \ . / / / | ∧ \ ヽ / / | | | | |. . . ;l_l__. | |l | | . 从7ナ ヘヽ;. }レ从/ノリ | . | . .|ィ孑テ ` |ノイソ} .| 「うう~ん……!? ……ああ、びっくりした | . . | ヽ, ゞー 、`´ | | そうだ……私昨日あいつを召喚しちゃって……それで疲れて寝ちゃったんだっけ ノ. |. . ヽ . ゝ _ /| ヽ そう言えばあいつ自分の名前も言ってないじゃない /. . .ノ . . . } . . .}` 、_ イ . . | . 、\ ……ここらで一回ご主人様としてしっかり教育しなきゃね…… //. . ./. . . ./l . . . .〉_,_,_」-┤ . ヽ. ヽ, ヽ こら! あんた! 起きなさい!」 ./ {. . ./ rーく/ . . . / /∧ ∧ . . \〉 } ヽ l . レ / . . . . ∧ ⌒∨ \ . .ヽ ノ \! l l . . ./、 ヽ、/ -ー } . . . .Y }/ | .. . { \_ _/ | . . . / /l \ ヽ ノ || \ / . . . .∧ヽ ./ | 〉 . .\ || ヽ/ . . . / | \ 339 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 22 11 55.51 ID gckj6eAy0 ,. -‐ 、. /  ̄`~` ‐ 、 / ` ` ‐、 / `‐、 / \ , \ / ! \ / l ! | i . / , │ l l ! | │ / /./ | │ l 、 | | | , | .l ! . / / /l ! l | | | \ !|l | / | | ! / / ./ ! | l l | | ヽ. ヽ\ \ ヽ. ヽ. |│/ヽ| ! l ! 「すでに起きている。貴様が寝すぎなだけだ」 ` ‐ 、| l ヽ. ヽ.ヽ. ! l\\`‐、ヽ、\ヽ.| レ /ヽヽl ! ! . `‐、| 、ト、__\ 、 ヽ. l トーz、-‐ラ フヽ!|!/_,ゝヽ }. |│ \ヽl\`ー ヽ、\ヽ ∨ー`‐← ||!-、-、 /! |│ ヽト. ´ ̄ジヽN` -ゝ |! リ /|.| | | ! \ _iー | |.| | | |\. \ r‐== ヲ |  ̄`~` ‐ - 、 | ` ー-ヽ、 V r -‐ / .| | | `‐、 `ー- ./| , -.、 | | `‐、 / .| { {lll}} f{! _ _,,. 、-‐ | `エ´-─ー| ` ー ゞ ´ ヽ` ー- |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| / 348 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 22 15 39.50 ID gckj6eAy0 , -‐ ´ ` ー、 / `ー-、 ,‐´ 、 `ヽ、 f‐ | ヽ ヽ ヽ / ー、 ヽ_ / ヽ ヽ ヽ\ ヽ / } _ l ヽ ヽ/! ヽ i ヽ i l / / ヽ l、 ヽ l ハ/f-f、 }l l、 |リ l l l_l_lr- {_ゝヽ ヽ |//fc リ /! /リ l |. . } l ハ、=ゞ==リ / ムソ /イ 〈 「きゃっ!? おおお、起きてたんならご主人様を起こしなさいよね! ノ l. . l イ /´七C、ム/ .. lゝ、ヽ、 ……んん! 昨日はうやむやになっちゃったけど、あんたは使い魔なの `ー-´ _-‐!. . ヾ l 弋ソ .. .. }l  ̄ 使い魔はご主人様のために働くのが当然で ー----- f´ ヽ. . ヽ、 ,__ -= /ヽ、 朝起こすのも、洗濯も、掃除も、着替えも全てあんたがやるのよ . . . _-―‐´、 ヽ. . . ヽ、 /  ̄ノ/! ヽ、 いい? わかった?」 . . . ヽ ヽ、 \ . . . ヽ、_ー‐ニ‐´ !. . ヽ、 . . . . .ヽ、ヽ ヽ、_ ヽ、! ヽフニイ / /ヽ . . ヽ . . ./ヽ、ヽ `ー-ヽ. . ヽl ll l / ヽ、. . ヽ . . . i ヽ \ }. . } l 7 | / }. . . } . . l \ `ヽ、 /. . . . , ヽTl / / /. . / . . .l \ \/. . . . /`ヽ、/ /. . . / . ./ ヽ/. . . . / / l| /. . . ,-‐´ 355 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 22 18 42.66 ID gckj6eAy0 ,. -‐ 、. /  ̄`~` ‐ 、 / ` ` ‐、 / `‐、 / \ , \ / ! \ / l ! | i . / , │ l l ! | │ / /./ | │ l 、 | | | , | .l ! . / / /l ! l | | | \ !|l | / | | ! / / ./ ! | l l | | ヽ. ヽ\ \ ヽ. ヽ. |│/ヽ| ! l ! 「ふぅん、さすが凡骨言うことが違うな ` ‐ 、| l ヽ. ヽ.ヽ. ! l\\`‐、ヽ、\ヽ.| レ /ヽヽl ! ! 己の無能を棚に上げ人に頼るとは . `‐、| 、ト、__\ 、 ヽ. l トーz、-‐ラ フヽ!|!/_,ゝヽ }. |│ 着替えすらまともにできんとは、貴様は凡骨よりも猿のほうがお似合いだな \ヽl\`ー ヽ、\ヽ ∨ー`‐← ||!-、-、 /! |│ 人として恥をしれ!」 ヽト. ´ ̄ジヽN` -ゝ |! リ /|.| | | ! \ _iー | |.| | | |\. \ r‐== ヲ |  ̄`~` ‐ - 、 | ` ー-ヽ、 V r -‐ / .| | | `‐、 `ー- ./| , -.、 | | `‐、 / .| { {lll}} f{! _ _,,. 、-‐ | `エ´-─ー| ` ー ゞ ´ ヽ` ー- |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| / 382 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 22 24 34.05 ID gckj6eAy0 , -‐ ´ ` ー、 / `ー-、 ,‐´ 、 `ヽ、 f‐ | ヽ ヽ ヽ / ー、 ヽ_ / ヽ ヽ ヽ\ ヽ / } _ l ヽ ヽ/! ヽ i ヽ i l / / ヽ l、 ヽ l ハ/f-f、 }l l、 |リ l l l_l_lr- {_ゝヽ ヽ |//fc リ /! /リ l |. . } l ハ、=ゞ==リ / ムソ /イ 〈 「さ、さささ猿ですってぇ~!? ノ l. . l イ /´七C、ム/ .. lゝ、ヽ、 ご主人様に向かって何てこというのよ! 誰が養ってあげると思ってるの!? `ー-´ _-‐!. . ヾ l 弋ソ .. .. }l  ̄ あんたこれからご飯抜きよ!? 一生あげないんだからね!?」 ー----- f´ ヽ. . ヽ、 ,__ -= /ヽ、 . . . _-―‐´、 ヽ. . . ヽ、 /  ̄ノ/! ヽ、 . . . ヽ ヽ、 \ . . . ヽ、_ー‐ニ‐´ !. . ヽ、 . . . . .ヽ、ヽ ヽ、_ ヽ、! ヽフニイ / /ヽ . . ヽ . . ./ヽ、ヽ `ー-ヽ. . ヽl ll l / ヽ、. . ヽ . . . i ヽ \ }. . } l 7 | / }. . . } . . l \ `ヽ、 /. . . . , ヽTl / / /. . / . . .l \ \/. . . . /`ヽ、/ /. . . / . ./ ヽ/. . . . / / l| /. . . ,-‐´ 398 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 22 28 54.96 ID gckj6eAy0 , -─- 、 , -‐- 、 ,, - `V `‐、 / \ ./ \ / ヽ ./ / l ヽ / / / / ./ / l | .l .lヽ | l. l / / / ./ .l | | l / / l l.〉 l、 | | l / / ./ ./ |. l | ./ ./ ./ | |./ l、| | l // ///| l / / //// / / . l、l | /l///_/ l / //_|/_∠| / | / . /⌒ヽ | \ `ー ゝl // `ー /|/⌒v 「勝手にするがいい。先ほどこの寮の中を探索したが厨房があるようだな | l⌒l l|  ̄ ̄ //|〉 ̄ ̄ ̄ .|/^_l.l あれだけの設備があれば飯など自分で作れるわ ヽゝ(ー| /| ´ \| ll ),l ノ ふぅん。それよりもいいのか? 部屋の外がずいぶんと騒がしくなってきている lヽ_ / | ┌───7 /._/ お前が遅刻しようと俺には関係はないがな」 .l/ | l ̄ ̄ ̄/ / / ,ノ! / |.. V´ ̄∨ ./ /,.-‐ .| ./ (;;) |\ `ー‐ ´ / / | | _|_\ /| ./ | (| ,.-‐ | \__/ .|/ _,.-─; |/ .(;;) |─────┤ _,.-‐ /  ̄ | |^l / 424 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 22 33 27.50 ID gckj6eAy0 / . / . 〃. / ヽ . .l. . . . . . / / ./  ̄.`X /. . . { { ヽ , . ヽ . .!. . . . . . l | .l . . . /l. . l\ ∧ . , . .j . 厶 .-ヘ ̄|`. . . . l | . ! | . . . ! ヽ{_ V\ヽ ハ . . /jイ/ \ . l. . |. . . . . . ヽヘ . .从 . . .lィ彡≠=ミ、 ´ } `ー/ ,ィ===ミヽヾ j . . . 「は、早くそれを言いなさいよね! |`ヽ!ヽ . . .{´ _ノ / ヾくリ . . . . ああもう! 使い魔がいるのになんで自分で着替えなくちゃいけないのよ!」 | . ハ. . .\ヽ __ _ , . . . . . ノ_厶| . . l / `ー─ヘ. / . . . . . 厂 | . . ,. , /´ ̄ ̄ヽ l / . . . . . . . _l l . .ヘ f { }l イ . . . . . . . _ -‐彡j ,′ . . . .\ ヽヽ ___ ノ/ /〃 . . . . . . . / .{ / . . . ヽ ヘ、 ` ー一 ´ イ/ ,′ . . . . . . . / . . . ./ \ / . . . . . ∨\_≧ー-‐≦_/ /i . . . . . . . 〃 . . . // \ / . . . . . . .l ∧ ∧ / { . . . . . . { . . / . / / . . . . . . . . .| ,/ ∨ ヽ / ヽ . . . . . . 430 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 22 34 57.92 ID gckj6eAy0 ,. -‐ 、. /  ̄`~` ‐ 、 / ` ` ‐、 / `‐、 / \ , \ / ! \ / l ! | i . / , │ l l ! | │ / /./ | │ l 、 | | | , | .l ! . / / /l ! l | | | \ !|l | / | | ! / / ./ ! | l l | | ヽ. ヽ\ \ ヽ. ヽ. |│/ヽ| ! l ! 「……貴様、俺の存在を忘れるとはいい度胸だな」 ` ‐ 、| l ヽ. ヽ.ヽ. ! l\\`‐、ヽ、\ヽ.| レ /ヽヽl ! ! . `‐、| 、ト、__\ 、 ヽ. l トーz、-‐ラ フヽ!|!/_,ゝヽ }. |│ \ヽl\`ー ヽ、\ヽ ∨ー`‐← ||!-、-、 /! |│ ヽト. ´ ̄ジヽN` -ゝ |! リ /|.| | | ! \ _iー | |.| | | |\. \ r‐== ヲ |  ̄`~` ‐ - 、 | ` ー-ヽ、 V r -‐ / .| | | `‐、 `ー- ./| , -.、 | | `‐、 / .| { {lll}} f{! _ _,,. 、-‐ | `エ´-─ー| ` ー ゞ ´ ヽ` ー- |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| / 444 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 22 37 10.48 ID gckj6eAy0 , -‐ ´ ` ー、 / `ー-、 ,‐´ 、 `ヽ、 f‐ | ヽ ヽ ヽ / ー、 ヽ_ / ヽ ヽ ヽ\ ヽ / } _ l ヽ ヽ/! ヽ i ヽ i l / / ヽ l、 ヽ l ハ/f-f、 }l l、 |リ l l l_l_lr- {_ゝヽ ヽ |//fc リ /! /リ 「はぁ? 何言ってるのよ l |. . } l ハ、=ゞ==リ / ムソ /イ 〈 使い魔に体見られたって恥ずかしいわけないでしょ ノ l. . l イ /´七C、ム/ .. lゝ、ヽ、 もう! 時間ないんだから邪魔しないでよ!」 `ー-´ _-‐!. . ヾ l 弋ソ .. .. }l  ̄ ー----- f´ ヽ. . ヽ、 ,__ -= /ヽ、 . . . _-―‐´、 ヽ. . . ヽ、 /  ̄ノ/! ヽ、 . . . ヽ ヽ、 \ . . . ヽ、_ー‐ニ‐´ !. . ヽ、 . . . . .ヽ、ヽ ヽ、_ ヽ、! ヽフニイ / /ヽ . . ヽ . . ./ヽ、ヽ `ー-ヽ. . ヽl ll l / ヽ、. . ヽ . . . i ヽ \ }. . } l 7 | / }. . . } . . l \ `ヽ、 /. . . . , ヽTl / / /. . / . . .l \ \/. . . . /`ヽ、/ /. . . / . ./ ヽ/. . . . / / l| /. . . ,-‐´ 448 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 22 38 00.60 ID gckj6eAy0 ,. -‐ 、. /  ̄`~` ‐ 、 / ` ` ‐、 / `‐、 / \ , \ / ! \ / l ! | i . / , │ l l ! | │ / /./ | │ l 、 | | | , | .l ! . / / /l ! l | | | \ !|l | / | | ! / / ./ ! | l l | | ヽ. ヽ\ \ ヽ. ヽ. |│/ヽ| ! l ! 「……ふぅん、先に行くぞ」 ` ‐ 、| l ヽ. ヽ.ヽ. ! l\\`‐、ヽ、\ヽ.| レ /ヽヽl ! ! . `‐、| 、ト、__\ 、 ヽ. l トーz、-‐ラ フヽ!|!/_,ゝヽ }. |│ \ヽl\`ー ヽ、\ヽ ∨ー`‐← ||!-、-、 /! |│ ヽト. ´ ̄ジヽN` -ゝ |! リ /|.| | | ! \ _iー | |.| | | |\. \ r‐== ヲ |  ̄`~` ‐ - 、 | ` ー-ヽ、 V r -‐ / .| | | `‐、 `ー- ./| , -.、 | | `‐、 / .| { {lll}} f{! _ _,,. 、-‐ | `エ´-─ー| ` ー ゞ ´ ヽ` ー- |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| / 461 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 22 43 13.92 ID gckj6eAy0 ,. -‐ 、. /  ̄`~` ‐ 、 / ` ` ‐、 / `‐、 / \ , \ / ! \ / l ! | i . / , │ l l ! | │ / /./ | │ l 、 | | | , | .l ! . / / /l ! l | | | \ !|l | / | | ! / / ./ ! | l l | | ヽ. ヽ\ \ ヽ. ヽ. |│/ヽ| ! l ! 「ふぅん。本来なら凡骨に名乗る名はないが ` ‐ 、| l ヽ. ヽ.ヽ. ! l\\`‐、ヽ、\ヽ.| レ /ヽヽl ! ! 特別に教えてやろう」 . `‐、| 、ト、__\ 、 ヽ. l トーz、-‐ラ フヽ!|!/_,ゝヽ }. |│ \ヽl\`ー ヽ、\ヽ ∨ー`‐← ||!-、-、 /! |│ ヽト. ´ ̄ジヽN` -ゝ |! リ /|.| | | ! \ _iー | |.| | | |\. \ r‐== ヲ |  ̄`~` ‐ - 、 | ` ー-ヽ、 V r -‐ / .| | | `‐、 `ー- ./| , -.、 | | `‐、 / .| { {lll}} f{! _ _,,. 、-‐ | `エ´-─ー| ` ー ゞ ´ ヽ` ー- |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| / 467 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 22 44 55.14 ID gckj6eAy0 , -─- 、 , -‐- 、 ,, - `V `‐、 / \ ./ \ / ヽ ./ / l ヽ / / / / ./ / l | .l .lヽ | l. l / / / ./ .l | | l / / l l.〉 l、 | | l / / ./ ./ |. l | ./ ./ ./ | |./ l、| | l // ///| l / / //// / / . l、l | /l///_/ l / //_|/_∠| / | / . /⌒ヽ | \ `ー ゝl // `ー /|/⌒v 「俺の名は海馬瀬人!!!! | l⌒l l|  ̄ ̄ //|〉 ̄ ̄ ̄ .|/^_l.l 決闘者の頂点に立つ男だ!!!! ヽゝ(ー| /| ´ \| ll ),l ノ フハハハハハハハハハ!!!!!!!!」 lヽ_ / | ┌───7 /._/ .l/ | l ̄ ̄ ̄/ / / ,ノ! / |.. V´ ̄∨ ./ /,.-‐ .| ./ (;;) |\ `ー‐ ´ / / | | _|_\ /| ./ | (| ,.-‐ | \__/ .|/ _,.-─; |/ .(;;) |─────┤ _,.-‐ /  ̄ | |^l / 478 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 22 47 06.23 ID gckj6eAy0 / 、 \ \ /` \ X ヽ ヽ ヽ / / / l ∨,斗、! ! | |/ / | |\ / f ハ ゙| l , {| | 丁≧ミ、/ ゞ′ l | 、ヽ レ ヾ \く ヾ;〉 , 、 | l ヽ \ 「きゃああああ!? ちょっと!? \.>〃 ` / ノ/ ∧ \ , 何大声上げてんのよ!?」 r ^ヾヽ |ハ、__ ヽ /〃´  ̄`ヽ ヽ! / } .リ | | ̄// \ \ ヽ /ヽ ノ l ∨ / 、 ヽ ` ー -- 、 Y´ /`ヽ. |/ 〈 _ \ ! \ ヽ/ \ ノ´ ヽ ヽ ト、 \ , { \ソ ̄ `ヽ \ , |ヽ\ \l \ \ l ヽ l|. \\ } . \ } ハ | ∧. ヽ \ / / ヽ /! } ! / ヽ } ヽ / /`ヽ ノ\ \ //| | | \ | / 480 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 22 49 16.19 ID gckj6eAy0 ,. ´ ̄ ` 、 /`´ \ / 、 `ヽ、 / / !ヽ i i i | / / ,|/⌒、 | ハノ !`´ i 、\灯`|ノi / 「ミセス・シュヴールズ 人,ノ! i ト、.\. | .i/ >`ー- 、_ ゼロのルイズの使い魔がうるさくて勉強に集中できませーん」 / ∧i, |ヽ ̄ / ∨ ` ‐ 、 `ー´ / .ハ\ k. フ/ , `ー、 ;ヘ _,./ / i |\ トイ ! /ゝ、 ヽ; /! ヘ ./ ./ ー.j |―\!v ⌒ヽ;/´ ` -、i / ./ i / / i ム ,ノ / ヽ r ´ / | .| /. |,.- ´  ̄`ヾ; / ∨ i | / i ,! ヘ、_ _ ,.-, / ノ 、 ,/ i / | .r _`__ ∨イ.〉´ , く_/´ / / !/ ヽ ト、 _,.-y´//_ ,.- く,i `v、 / / ;/ ノ .人ゝ._,.ノ_,/ i ヽ、 iク / / / ー / i ヾ´ / 496 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 22 53 28.86 ID gckj6eAy0 , -‐ ´ ` ー、 / `ー-、 ,‐´ 、 `ヽ、 f‐ | ヽ ヽ ヽ / ー、 ヽ_ / ヽ ヽ ヽ\ ヽ / } _ l ヽ ヽ/! ヽ i ヽ i l / / ヽ l、 ヽ l ハ/f-f、 }l l、 |リ l l l_l_lr- {_ゝヽ ヽ |//fc リ /! /リ 「キュルケ! あんたは元から勉強する気なんてないでしょ l |. . } l ハ、=ゞ==リ / ムソ /イ 〈 ……え? ミセスシュヴルーズ ……はい。わかりました。 ノ l. . l イ /´七C、ム/ .. lゝ、ヽ、 『錬金』をみんなの前でやってみせます」 `ー-´ _-‐!. . ヾ l 弋ソ .. .. }l  ̄ ー----- f´ ヽ. . ヽ、 ,__ -= /ヽ、 . . . _-―‐´、 ヽ. . . ヽ、 /  ̄ノ/! ヽ、 . . . ヽ ヽ、 \ . . . ヽ、_ー‐ニ‐´ !. . ヽ、 . . . . .ヽ、ヽ ヽ、_ ヽ、! ヽフニイ / /ヽ . . ヽ . . ./ヽ、ヽ `ー-ヽ. . ヽl ll l / ヽ、. . ヽ . . . i ヽ \ }. . } l 7 | / }. . . } . . l \ `ヽ、 /. . . . , ヽTl / / /. . / . . .l \ \/. . . . /`ヽ、/ /. . . / . ./ ヽ/. . . . / / l| /. . . ,-‐´ 前へ トップページ 次へ
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前ページ/ゼロの使い/次ページ オスマンから、他言無用とは言われたが、主でもなく、自分より強いわけでもないオスマンに彼が従うはずは無かった。 彼は確かに、この学院最強のメイジだったが、彼と言えどもメディルには、 否、この学院中の「メイジ」が束になったところでメディルには敵わない。それは事実だった。 彼は部屋に戻るなり、事の仔細をルイズに報告した。一応、他言無用と釘をさしておいたが。 「正直、私はお前の様な小娘に従うのは不本意だった。だが、お前のお陰で私は他の魔術師が成し得なかった偉業を達成することが出来たのだ。 礼を言うぞ、ルイズ。」 メディルは件の書が解読出来た事によって、相当寛大な気分になっていた。 「そ、そんな・・・私は只・・・」 「謙遜することは無い。これからはかつての主君に仕える心構えで、お前に尽くすことを約束しよう。」 「そ・・・そう・・・これからもよろしく・・・」 正直、ルイズは彼の豹変振りに若干引いていた。 サモン・サーヴァントによって呼び出された者は多少、主に対し友好的になると言うが、 いかに長年解けなかった謎が解けたとはいえ・・・ひょっとしたらこれが彼の素なのかもしれない。 「あ、そうそう明日は品評会があるんだけど・・・何かいいアイデアはある?」 「品評会?」珍しく首をかしげる使い魔に、ルイズは説明する。 「毎年恒例のイベントよ。生徒が召還した使い魔をこの国の姫様と学院中にお披露目する・・・と言うね。」 「ふむ、それならば本番までに獣の骨を用意してくれないか?おそらく珍しい物を見せてやれるはずだ。」 「獣の骨ね。それならば厨房へ行けば鳥や豚の骨がいくらでもあるはずよ。持ってくるわね。」 何に使うか想像は出来なかったが、きっと物凄い事をやってのけるに違いない。 ルイズのそれは、予想でも過信でもない、確信だった。 翌日、メディルは自分の番が来るまで、ずっとあの巻物を読んでいた。 そして品評会の締め括り・・・いよいよメディルの番が訪れた。 「皆様、これにございますは鳥や豚といった動物の骨でございます。」 普段とは明らかに異なる芝居がかった口上と共に、メディルは壇上にルイズが厨房から持ってきた骨を並べた。 「それでは皆様、ご一緒にカウントダウンをお願いいたします・・・」 3・・・ 2・・・ゴクリ・・・ 1・・・客席の生徒や教師、アンリエッタ姫を筆頭とするトリステイン政府関係者、そして彼の主に緊張が走る。 「ザオリク!!」 客席から驚きの声が次々と上がった。 壇上の骨が浮かび、元の骨格を復元していき、やがて臓器や神経が生成され、骨だった動物達は元の姿に戻り、文字通り生き返ったのだ。 会場からは嵐、否あらゆる天変地異を同時に起こしたような拍手が送られ、当然のごとく、全ての賞はメディルに送られることとなった。 そして無事、品評会が終了し、二人は部屋へと戻った。 「凄いじゃないメディル!!死んだものを生き返らせるなんて。」ルイズがメディルの知る限り、最高の笑顔を浮かべながら彼の功績を褒める。 「賞賛には及ばぬ。通常ザオリクは下級の魔物や一部の人間、それにさっきの様な動物にしか効果を発揮しないのだ。」 「それでも十分凄いわよ!!」 コッコンコンコン・・・コンココン 突如、部屋に奇妙なノックが響いた。まるで何かの暗号のようだ。 「何だこの奇妙なノックは・・・?」 「まさか・・・このノックは・・・」 何か思い当たる節があったのか、扉を開けたルイズが、満面の笑みを浮かべる。 「やっぱり・・・」 そこには黒いショートヘアの見目麗しき気品溢れる女性― 品評会にも出席していた、アンリエッタ姫殿下その人であった。 「久しぶりね。ルイズ」 前ページ/ゼロの使い/次ページ
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「ちょっと!勝手になにやってるのよ!」 ルイズがワムウに喚き散らす。 ワムウは顔色一つ変えずに返す。 「あちらが申し込んできた決闘だろう?受けないで断れとでも言うのか?この世界にも決闘で優劣を決める風習があるとはな。 魔法使いとやらの能力もまだわかりきっていない、あの小僧で試させて貰おう。それとも、断れとでも言うのか?」 「断ってあたりまえでしょ!あんた、平民が貴族にかなう…」 ルイズは彼の戦闘能力を思い出す。 「そ、その、殺したり食ったりしちゃだめよ?」 「……」 ワムウは無言で返す。 「さあ、ヴェストリの広場とはどこだ、案内しろ。お前がしないならその辺の人間どもでも構わないがな」 周りの生徒たちはそそくさと出て行く。昼時の食堂だというのに一気に閑散とする。マルトー涙目だ。 ため息をついてルイズはヴェストリの広場へ向かい始めた。 「さあ、こっちよ。もう一度言っておくけど、私以外の人間も殺したりしちゃだめよ? 貴族を殺したりしたら、どうなるかわからないし、知らないからねッ!」 * * * ワムウが来る前のヴェストリの広場。既に野次馬が集まっている。 涙を流すモンモンラシーと胸を張るギーシュ。 「モンモンラシー、心配するな!君の愛の結晶を壊した野蛮な亜人は僕が退治してあげよう!」 「違うわよ!あんな香水いつだって作ってあげるわよ!でもね、あの亜人はね!その辺の使い魔とは段違いなのよ!」 召還したときのクラスにいたモンモンラシーが涙声で力説する。 「所詮『ゼロ』の使い魔だろ?大体、ドラゴンやエルフクラスの亜人ならともかく、魔法も使えない使い魔に『ドット』とはいえメイジの 僕が負けると思っているのかい?それは心外だな、モンモンラシー。心配しないで君は見守っててくれたまえ」 「あ、あのね!あの亜人はね!トライアングルはあるはずのコルベール先生のファイヤー・ボールを片手でかき消したのよ!」 「ははは、あの禿の昼行灯先生だ…えええええええッ!」 ギーシュの顔が青ざめる。 「そうよ!魔法を吸い取る能力とかあるかもしれないわよ!もしかすると新種のエルフかも知れないわ!ああ、恐ろしい」 「ちょ、ちょっと待ってくれよ、もう僕は決闘の約束してしまったよ?ど、どうすればいいんだあああ!」 「諦めて謝りなさい、いくらなんでも謝れば許してくれるわよ……たぶん」 「今たぶんって言ったなッ!?たぶん!?……それに、謝ることなんかできないよ!なんたって僕は青銅のギーシュ、グラモン家の男として! 決闘で背を向けることは許されない!今考えることは、あの使い魔にどうやって勝つかだ!モンモンラシー、知ってることを教えてくれ!」 「はあ、あんたには何言ってもわからないみたいね……ケガならできる限り私が手当てならしてあげるから、絶対に…死なないでよ?まずあいつはね……」 * * * ヴェストリの広場にワムウが堂々と入ってくる。 遅れてルイズ。 「よよよよよよよく来たな!にに、逃げずに来たことは、ほほほほ誉めてやろうじゃないか!で、でも今なら逃げたかったら逃げてもいいぞ!」 ビビりまくりのギーシュ。 対してワムウは初対面の野次馬たちの野次をものともせず、怯むどころかむしろ風格さえ感じさせる。 「御託はいい、お前が逃げないのならば決闘の開始だ。決闘のルールはどうする?ナイフエッジデスマッチでも古代騎馬戦でもチェーン首輪デスマッチでも構わん… と言いたい所だが、生憎、ご主人の命令で殺すなと言われているからな、デスマッチはできなさそうだ。最も貴様が望むなら、構わないがな」 ギーシュは殺すなという命令に従っていると聞いて少し顔色を戻す。 「…もっとも、『不慮の事故』は決闘にはよくあることだがな」 ギーシュの顔色が再び青くなる。 (こ、こうなったら奥の手しかない…!) ギーシュは決心を固める。 「決闘のルールはッ!グラモン家に伝わるルール!『ナイトウィッシュ(騎士の願望)』で執り行うッ!」 そのルールを聞いて青色の髪の小柄な少女が反応する。 「『ナイトウィッシュ』!?」 「知っているのタバサ?」 『ナイトウィッシュ』とは 現在から遡るころ約2世紀前にトリステイン王国周辺で最も繁栄した決闘法である。そのころのトリステインでは魔法騎士の 全盛期でありながらその魔法騎士たちの経済状況が『タルブの悲劇』により困窮している時期であった。そのため彼ら騎士の中には 剣と杖両方持っていない者が少なくなく、片方の武器しか持たないものが普通の決闘法ではどうしても不利になってしまう。そのため 剣か杖どちらかを選び、その選んだ方の武器だけを持ちそれを先に落としたほうが負けだという非常に単純明快な決闘法である。この 決闘法の流行した中期には騎士の名誉であり象徴でもある剣と杖どちらか片方を落とすということで、落下した場合騎士が生きるか死ぬか ちょうど半々の割合である高さ4.8メイルの円盤状のプレートの上で行い、負けたほうは即座にそのプレートから落ちると定められて いた。この決闘法で円盤から落ちたものは死なないまでも非常につらい苦しみを味わうことから4.8メイルの4と8の数をとって 非常に苦しいことである『四苦八苦』の語源になっている。 現在ではこの風習は廃れているが、タルブ周辺で行われている剣も杖も持たない平民の間で素手で相手を突きとすか倒すことを目指す 『アフガンコウクウスモウ』のルーツではないかという研究が進んでいる。 (出典 ガリア書房刊「中世 18人の名騎士達」より) 「よ、要するに、相手の持ってる杖か剣を叩き落すなりなんなりすればいい、ってことね」 タバサと呼ばれた少女は無言でうなずく。 タバサが説明している間にワムウへの説明も済んだようだ。 「僕は魔法使いだ!よって、僕は杖を選ばせて貰おう。君は剣で構わないかね?」 「ああ、よかろう」 (ま、まずは第一関門突破だ!モンモンラシーの言う話では彼の身体能力は異常!それならば隙の大きくなる剣を持たせれば 動きも少しは落ちるだろう。多少リーチが長くなるが、魔法使いの側のほうがもともとリーチは非常に長い! 接近されるまで僕のワルキューレで時間を稼いで、接近をされたならば『奥の手』で奴を怯ませる! あの巨体を倒せ、と言われたら無理だけれども怯ませることさえできればッ!接近している状態ならば剣を落とすくらいは可能ッ!) 「開始の合図は?」 ワムウが問い掛ける。 「あと数分で鐘が鳴る。鳴り始めたら決闘開始だ!剣を受け取れ!」 * * * (ふむ、『ナイトウィッシュ』か、片手が塞がってしまっていて神砂嵐が放てん……それに、いくらここの太陽光線が 弱いからといって、真昼間にはさすがに調子が悪い。神砂嵐は夜専用、と見てかまわんだろうな。だが、波紋戦士どころか 挙動を見る上戦闘のセンスも、経験ももっていないようだ。そんな小僧が多少魔法使ってきたところで、ハンデを背負っているとは言え 負けるとなれば今まで向かってきた誇り高き波紋戦士たちに申し訳がたたんな……これだけの人前だ、食うという能力を晒すことは この先、非常に不利なものがあるかもしれんな。まだ魔法についてはわからんことも多い、とりあえずあの程度の相手ならば 主人の約束を守ってもいいだろう…事故の責任や面倒まではみれんがな……) 「開始の合図は?」 緊張している様子のギーシュにワムウが問い掛ける。 「あと数分で鐘が鳴る。鳴り始めたら決闘開始だ!剣を受け取れ!」 虚勢を張っているのがワムウにはわかる。投げてよこされた剣を見るためにつかむ。 (どれどれ、ナマクラというところか、!?なんだ、左手の甲が光っている…体が軽いぞッ!これは、まるで太陽を浴びていないかのようだッ! 片手が塞がっているために神砂嵐は放てんが…これが『契約』とやらの影響か?条件はまだはっきりとはしていないが…ついでにこの能力も試させてもらおう) 数時間にも感じるようなピンと張り詰めた空気が続く。 そして、学校の鐘が低い音を響かせた。 「ワルキューレッ!」 ギーシュが手を広げたゴーレムをワムウの前に出現させる。 「ギーシュ、あんな短い時間でゴーレムを出せるのか!?」 「小さくて青銅とはいえ、一瞬であの位置にゴーレムを出すなんてトライアングルでも難しいぞ!」 (ふふ、驚くのも無理はない!バカ正直に決闘開始の時間なんて誰が待つか!開始前に地面の中でワルキューレを錬金しておいたんだ! 地表のゴーレムを一瞬で出現させるくらいならわけはないッ!) 「ギーシュってかっけーなー でもゴーレムがいちげきで吹っ飛んで いったいどうなるんだろう ギーシュはおれのダチ」 ワムウが剣を持っていない左手でワルキューレを吹き飛ばした。腹の位置には無残にも穴があいていた。 「なにいいいいいィイイイッ!」 一撃で粉砕されたギーシュが驚きの声をあげる。 「ふむ、中身が詰まっていれば少々手ごたえがあるかと思ったが、外だけのブリキ人形か。人形ならアジアで出会った『オートマータ』の方が まだ手ごたえがあったぞッ!」 ワムウの近くに青銅の粉が舞う。 (なんだあの化け物はァアアアアッ!一体目で数十秒稼ぐつもりがァアアアッ!ワルキューレの余裕はなさそうだ…… しょうがない、作戦変更だ、多少心もとないが2体目は『アレ』でいくッ!) 「もう一回だ!ワルキューレッ!」 「バカの一つ覚えか?もう一度破壊してやるぞッ!」 ワムウが左手を振ろうとする、しかしその瞬間! ワルキューレの肩が輝く! 「モンモンラシーの話からお前が脱出よりまずコルベール先生を倒そうとしたことはわかっている!あれだけの戦闘センスなら囲まれた 状態よりまずは広い場所に出てから戦おうとするのは当然の考え!なぜそれをしなかったか!それは外に出てからでは倒す自信がなかったからだ! 『太陽の光』に弱い!この仮説は正しかったようだなッ!」 肩が反射した光をもろに浴び波長の弱い光といえワムウは怯んだ。 「MMWWWWWWWW!!!」 「剣ごと右肩もらったァーーッ!」 動きは鈍重とはいえここまで接近した状態でのパンチをかわせるわけがない。そんな常識にギーシュはとらわれていた。 しかし、『戦闘の天才』ワムウは伊達ではなかった。 2体目のゴーレムの破片がワムウの周りに降りかかった。 ゴーレムが振りかぶった瞬間、その拳が影になったのだ。 「どうした?もう終わりか?」 2体目を顔色も変えずに破壊したワムウがゆっくりと歩いてくる。 「もうやめてッ!」 観戦していたモンモンラシーが涙声でギーシュに向かって叫ぶ。 「ギーシュ、少なくとも今のあなたじゃかなわないわ!おとなしく降参しなさい!死んだらどうにもならないのよ! 決闘である以上、負けを認めればケガをさせることは認められないわ!」 ギーシュが振り向いて静かに話す。 「モンモンラシー、心配してくれることはうれしいけれど、それはできないね。 自分から申し込んだ決闘で命の危険を冒す前から降参するなんて、グラモン家として、いや男としてできないねッ! ましてや好きな女の子の前ではッ!」 叫ぶが早いか、走るのが早いか。 ギーシュはワムウに向かって突っ込んでいく。 ギーシュに向かって歩くのやめたワムウの眼前に立つ。 「正真正銘…最後のワルキューレ達だ!もう小細工はしない!」 ゴーレムが4体出現する。 「4方向からだッ!これはかわせないだろう!」 一瞬であった。ゴーレムが粉みじんになるのは。 後ろのゴーレム2体を回し蹴りで、その回転をそのまま利用して左フックで前方のゴーレム2体も破壊。 ギーシュの精神力を込めた人形は、青銅のかけらへと変わりワムウの周りに散った。 「これで最後だといったな、命令を受けている以上殺すのも気が進まんし今のお前にはそこの女がいったように殺す価値もない。 今杖を置けば降伏を認めてやる。もっとも、これだけの戦力差を見せられて臆さなかったお前には少々興味があるが、 しょせんまだ坊主だ。大人しく負けを認めろ。これ以上続けるようならば、容赦はせんぞ」 ギーシュが顔色を変える。 「ほ、ほんとうに許してくれるのか?」 一瞬で虎の子のワルキューレをやられたからか、決闘前のおびえた表情に戻っている。 「ああ、とりあえず今はな」 しかし、ギーシュ顔色を戻した。 「だが断る。最後といったのはワルキューレだッ!まだ僕の精神力はつきていないぞッ!この距離が、すごくいいッ!『錬金』!」 ワムウを中心に爆発する。 ギーシュが錬金したのはゴーレムの残骸であった。 ゴーレムの残骸をバラバラにし、粉にすることによって『粉塵爆発』を起こしたのだ! 青銅はもともと融点が低く、加工しやすいために『青銅器時代』さえおこしたこともある金属。 晴れ晴れとしていたヴェストリの広場であれだけの青銅の粉が舞えば粉塵爆発は当然の結果ッ! わざわざ壊されるかのようにワムウのごく近くにワルキューレを出現させていたのはこれが狙いだったのだ! (モンモンラシーから聞いている!コルベール先生のファイヤーボールは簡単にかき消された以上、僕のワルキューレに多少小細工を 弄したところで適う訳がない!しかし、なぜかゼロのルイズの爆発魔法を食らった途端、彼は怯んだというのだ! つまり、彼は『爆発』に弱い!間違いない!怯んでいる隙に剣を…) 着眼点はよかった。この距離ならば爆発に多少巻き込まれることも覚悟していた。彼ほど格上に善戦できるドットメイジは この学院にはいないだろう。 しかし、その仮説は残念ながら間違っていた。 「むぐぁ!」 剣を奪い取ろうとしたギーシュの腹にパンチが入り、数メイル吹っ飛ぶ。 立ち上がろうした時には既にワムウは近づいており、首根っこをつかまれ、持ち上げられる。 怯んでいた様子はない。体を見ると多少ほこりでよごれているものの、火傷どころかかすり傷すら負っていない。 ギーシュは観念したかのように目をつぶり、杖を手から離した。 (さよなら、父さん、母さん、友人たち、そしてモンモンラシー。降伏を断った以上、彼は僕を許さないだろうし…許すべきではない…) 低い音とともに地面に叩きつけられる。 ギーシュの体は地面に横たわった。 「ハッ!?いき、いぎでる?」 ワムウはすでに出口方向へ歩き出していた。 「亜人…じゃなかった…ワムウ、なぜ僕を殺さなかった?情けか?命令に従ったのか?」 ワムウは振り向かずに語った。 「貴様のちっぽけな根性…そのタフさがある戦士に似ていたものでな……奴とやったときと違いケガなどは負わなかった…しかしその ちっぽけな根性に免じて1度目は見逃してやる…だが、期限までに奴に並ぶほどの戦士になることを期待してやろう……」 「し、しかし、僕はどう考えても正々堂々と戦ったとは言えないぞ!自分に都合のいいようなルールを選び、君の弱点を狙った。 現に、君はその剣を使わなかったじゃないか!こんなアンフェアな戦いで完敗したんだぞ、僕は!」 「俺の…好敵手…俺を倒した奴もそんな奴だった…正々堂々、真っ向から攻めるなど考えもしないだろうな、奴なら。 弱点を狙って当然、狙わない奴がマヌケなのさといったしたり顔でレース開始前に車輪の下に瓦礫を置いて妨害するような奴だ。 だが、奴は誇り高き戦士であった。戦いを汚さない、それはお前も同じだ。決して人間のようにセンチになったのではない… だが、まだこちらの世界を知らん。好敵手の候補が増えるのは俺としても本望だ」 振り向いていた首を戻し、再度歩き出す。 「もう一つだけ、聞かせてくれ。……『期限』はいつだい?」 ワムウは振り向かずに言った。 「指輪がないからな、お前が死ぬか、俺が死ぬまでで構わん」 ワムウは、歩き去っていった。 ――ギーシュ、完全敗北。この後気を失った。複雑骨折により全治数週間の模様。再起可能 ――ワムウ、無傷。 あーん!ギーシュ様が負けた! ギーシュさまよいしょ本&ギーシュさまF.Cつくろー!って思ってたのに… くすん…美形はかませ犬だ… ・゚・(ノД`)・゚・うっうっう…ひどいよお…ふえーん!! この間「今、時代はギーシュだ!」の葉書を出してまだ2週間じゃないですか! どーして、どーして!?あれで終わり!?嘘でしょ!? 信じられないよおっあんなワムウごときに負けるなんてっ!! ジョジョと差がありすぎるわっ!!戦士になりますよね?ね?ね? ……泣いてやるぅ・゚・(ノД`)・゚・ 私はあのおそろしく鈍い彼が(たとえド女好きでもさ!ヘン!)大好きだったんですよっ!! ギーシュさまあっ!死んじゃ嫌だああああああっ!! 先生のカバッ!!え~ん・゚・(ノД`)・゚・
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職員や生徒の間で勅使が亡くなった、というニュースが流れていたが、その日は大多数の生徒にとっていつもの平和な朝だった。 もちろん、1人の少女と使い魔の間でも。 「……で、あの『ぷろてくたー』ってのはなんなの?」 「俺の世界では、身に纏う防具だったが…名づけた相手にとっては比喩だろう。俺の体の管から水蒸気を出し、それをウズ状にして 俺の周りに纏わせる。そうすれば光が屈折して俺に当たらない、故に姿が見えにくくなる。まあ、元々の目的は透明化ではないがな」 「あんたの風って便利ねー。異世界の亜人ってこんなんばかりだとしたら…恐ろしすぎるわね」 ワムウはそうでもない、と否定をする。 「我々はもう4人、いや2人しか残っていない。あちらでは亜人などと言う言い方はしていなかったがためになにを指しているか 詳しくはわからんが俺の世界で高等生命に足る知性があるのは人間と吸血鬼、屍食鬼くらいだった。俺の知っている限りではな」 「我々、ってことはあんたみたく風を操るのがあと1人いたの?」 「元々は4人居たのだが、2人は戦死した」 ルイズは黙る。 ワムウは語りだす。 「我々は一人一人能力が違う。一人はサンタナ、奴には大した能力も知性もなかった。もう一人はエシディシ様だ。あのお方は我々の中で 最も勤勉で、人間どもの戦略を必死に学んでいたな。二〇〇〇年ぶりの目覚めだというのに『戦争論』だの『海軍戦略』読んでいてなにが 楽しいか私には理解できなかったがな。あとは少々、気難しいというかなんというか…そして、エシディシ様は熱を操る流法『怪焔王』を 使っていた。俺の能力よりも使いやすく、どんな状況でもあの方ははほぼ落ち着いていた…ほぼだがな」 「次はカーズ様だ。我々の世界で吸血鬼を生み出す『石仮面』を作り上げるほどの知能の持ち主であった。正直な話、俺が求める『戦士像』 とは違っていたが、それでも偉大な方であった、と俺は思う。カーズ様は……もうあうこともないだろうしお前に話しても構わないだろうな、 カーズ様の流法は『光』。輝彩滑刀の流法といって骨を硬質化してエッジの部分を絶え間なく動かすことによって『チェーンソー』のように 切れ味を増し、どんな堅い物質であろうとも切り裂く。俺の肉体でも一瞬で切り裂かれるかもしれんな」 ルイズは、この目の前の化け物のような働きをした亜人の肉体を切り裂く武器があるのかと驚き息を呑んだ。『チェーンソー』とはなにかはよくわからなかったが。 「そして…仲間ではないが…というか我々の敵である人間、俺を破った人間の話だ」 ワムウを一人で倒せる人間の話、と聞いてルイズは今まで以上に緊張する。 「名はジョセフ…波紋戦士…正真正銘人間の青年だ。」 「ねえワムウ、あんたの話にたまにでてきたけど…波紋ってなに?」 ワムウは少し考えたのち答える。 「波紋とは…俺には原理はよくわからんが…吸血鬼、屍食鬼、そして我々の天敵だ。我々一族は普通の生命が例えば蹴りをはなって 来たとしよう。我々はその蹴りを、足ごと吸収して食える。したがって武器なしで打撃を与えることは普通はできないし、 武器があったとしても我々に身体能力で敵う生命など生まれてこのかたみたことがない。これは自慢でも過信でもない。 我々の誇りと自負だ。しかし、『波紋』は我々の弱点である。人間がこれを纏えば、我々にとってはどんな鎧よりも恐ろしい鎧となる。 波紋を纏った蹴りを吸収しようとすれば内部から組織が破壊され、波紋が通っている油を塗った鉄球を打ち込まれれば 屈強な我々一族の肉体をも貫き、立ち上がることすらできなくなる」 ワムウは続ける。 「そして俺を破った戦士、ジョセフはその波紋の使い手の一人であった。波紋の強さ自体は今まで戦ってきた戦士の中では中の上 程度であった、が、自分の弱ささえも武器にし、自分の本質を最大限に生かしていた。これは前にもいったな。『したたかさ』と 『高潔さ』を両立できる人間…戦士を俺は尊敬している。俺にとってそういった者は友であり尊敬するもの。俺は俺を倒した ジョセフや、俺に向かってきた戦士たちを尊敬している」 「あんたのいう『戦士』って、ただ強いだけってことじゃないの?」 「強者こそは真理であるし、敬意をも払う。しかし、俺が目指す、尊敬している友人たちは強いだけではなかった」 「話が長くなったな、もうそろそろ食事の時間だろう」 ワムウは話を終え、外へと出て行った。 * * * 朝の食堂。 「お、おはようモンモンラシー!今日も素敵だね!」 キザなセリフを吐きながらも、なぜか声の裏返っているギーシュ。 「そんなに慌てて、またあんたなにかやましいことでもあるのね?」 「ぜ、ぜぜぜぜぜぜんぜんないよ!ハハハハ!」 「ギーシュ様…最低!」 入り口に立っている女の子が泣きながら外に走り出した。 「あの子は後輩のケティね……あんた、後輩にも手を出して…」 「ははは、ちょっと待ってくれ、平和的に話し合いで…」 「どうして欲しいのあんたは?色々と嫌がらせしてみる?あんたのファン減らすためには…そうね、色々とバラしてみる?」 「や、やめてください…」 「ってことはやっぱりまだやましいことがあるのね?オラオラオラァー裁くのは私の水魔法だァーーッ!」 今日も食堂は平和であった。 ルイズ達が入ってくるとやや雰囲気が強張ったが、決闘騒ぎはもう過去の物となり、影にさえ気にしていれば大丈夫とされたため 大多数には特に目立った変化もなかった。キュルケはまだ怯えている少数派の一員だったが。 「あら、おはようシエスタ」 「おはようございます、ミス・ヴァリエール」 「前は言いそびれちゃったけれども、ルイズでいいわよ。そんな畏まらないで」 「そ、そんな恐れ多いです……そういえば前に話しましたモット伯の話を聞きました?」 ルイズはビクリとふるえる。ワムウは平然と食事を続ける。 (落ち着くのよルイズ……落ち着いて自然数を数えるんだ…自然数はなにかがある数字…私と胸に力を与えてくれる…) 「い、いえ聞いてないわ」 「それが、行方不明になったらしくて、私が勤める話もご破算になって…それでここの仕事に復帰できたんです」 「そ、そうよかったじゃない」 「ミス・ヴァリエール、なんだか目が虚ろですけれど風邪でもおひきになられましたか?」 「べ、別になんでもないわ、大丈夫よ。気にしないで」 「そうですか、では仕事に戻らせてもらいます」 シエスタが席から離れていき、ルイズはため息をついた。 (なんとか、うまくいったようね…死体も残ってないから「行方不明」になってるんでしょうけど…冷静に考えるとすごい恐ろしいわね) どうにか一息つき、シエスタの働きぶりを眺める。 (しかしよく働くわねー。メイドだけじゃなくウエイターや会計までやってるわ) 今日は虚無の曜日の前の平日であり、出かけている人も少なく、食堂は非常に混んでいた。 そして、その日はウエイターが数人休んでおり、ただでさえ多いシエスタの仕事は増していた。 そのため、いつものシエスタならば起こりえないミスを犯してしまったのだ。 「あっ!」 シエスタが持っていた飲み物が手から落ち、横にいた女生徒の頭にかかる。 「す、すみません!ミス・ヴィリエ!」 シエスタは膝を土につけ、必死で謝る。が、 「おのれ…よくも私の髪に飲み物をッ!」 ヴィリエと呼ばれた女性はその程度では許す気にはなれないらしく、杖を懐から出し、振り上げる。 (ああ、私を魔法で殴る気だッ!) しかし、杖は振られなかった。 いつのまにか後ろに立っていたルイズが杖を抑えたのだ。 「やめなさいよ、大人気ないわ。仮にも貴族であるなら程度をわきまえなさい」 「あら、『ゼロのルイズ』が貴族観について私に意見するの?」 相手の言にルイズは激昂しそうになるが、堪える。 「ええ、そうよミス・ヴィリエ。謝っているのにそれを認めずに杖を出すのがあなたの貴族観だっていうの?」 「ええそうよ、平民風情が多少謝ったところで許してたら私たち貴族の誇りは守れないの。私、残酷ですもの」 ルイズの眉が震える。 「じゃあ、どうすれば許すってのよ」 「どんなに魔法で痛めつけても、私の心は晴れないし許す気にもならないけど…それくらいの罰は受けてもらわないと、貴族としてね」 ルイズは一歩下がる。 そして、 目の前の少女を思いっきり殴った。 乾いた音が静かな食堂に響く。 倒れた状態でヴィリエは叫ぶ。 「おのれ…よくも私のハダに傷をッ!」 「や、やめてください!ミス・ヴァリエール!私が悪いのです!」 シエスタがルイズを止めようとする。 しかし、ルイズはそれを無視する。 「あんたがいくら私を侮辱しようとも構わないけれど…私の友人を侮辱するようなら!私はあんたを 許さないわ!貴族による決着のつけたたを私から教えてあげるわ、決闘よ!」 「決闘…ですって?貴族同士の決闘は許されていないわ」 「そんなのは関係ないわ…侮辱には『決闘』も許される!ヴェストリの広場で待ってるわよ」 ルイズは後ろを向き、出口へ向かう。 そして、一度振り向いて 「ただ、あんたがこの決闘の申し込みにも従わず、負けても従わないようなら、私はあんたに対して『貴族らしく』なんて考えないことにするわ」 そう呟いて食堂を出て行った。 To Be Continued...
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その日、マルトーに夕食を御馳走になった後、年代物が手に入ったといって振舞われたワインに気をよくし、ついつい長居をしてしまったヴァニラが部屋に戻ると、既にドアに鍵が掛けられていた 「おい、ここを開けろ」 酒精のおかげで多少おおらかになったヴァニラは即座にプッツンする事は無かったが多少いらついた口調でドアをノックする が、反応は無い 気配を感じる以上中にいるのだろうが寝ているのか無視しているのか・・・・恐らく後者だろう しかも足元には御丁寧に綺麗に畳んだ毛布まで置いてある ヴァニラは知る由もないが食事を終え部屋へ戻ったルイズは部屋にいない使い魔を探しに出て、ヴァニラが厨房でシエスタやマルトーたちとささやかな品評会を催しているのを見て機嫌を損ね、このような行動に出ていた しかし先記した通りヴァニラはそのことを知らない、つまりまたルイズの高慢さから出た自分勝手な行動だと認識する・・・・つまり挟み撃ちの形にならない バリバリとドス黒いクレヴァスが口を開け始め新しい入り口を新設してやろうか等と思い始め、即座に行動に移そうとしたのとほぼ同時に、廊下の向うからペタペタと四足歩行生物の足音が聞こえてきた 「む?」 クリームの口内へ潜り込もうとしていたのを中断し、音の方へ顔を向けると廊下の暗がりから微かに光る一対の瞳と、赤々と燃える炎が近づいてくる 「お前は・・・・」 それは今までこそこそと影からヴァニラを監視していた爬虫類 堂々と姿を現したのを戦意アリと認識したヴァニラがクリームを飛ばそうと身構える が、相手はそれを否定するように首を振り、きゅるきゅると人懐っこい鳴き声を出す 何故かヴァニラはその鳴き声の意味が理解できたような気がし、しゃがんで視線を合 わせ、問いかけてみた 「お前は・・・誰の使い魔だ?」 「きゅるきゅる」 その問いに答えるようにサラマンダーはルイズの隣の部屋へ平べったい顔を向けた 「・・・・・隣か、迂闊だったな」 眉間に皺を寄せ、苦々しく呟くヴァニラを他所に、サラマンダーはついて来いと催促 するようにヴァニラのジャケットの裾を引っ張る 「・・・いいだろう、何の用か知らんが理由も聞きたい」 ヴァニラは軽く溜息を漏らし、隣室のドアをノックする 「どうぞ」 返って来た女の声に、女子寮なので当然といえば当然だが――呼吸を整えると不意打ちに身構えつつドアを開け、足を踏み入れる しかし、部屋の中は真っ暗だった ヴァニラの後からついてきたサラマンダーの周りだけぼんやりと明るく光っている DIOの館で暗闇には慣れていたが召喚されて以来光のある生活が当たり前になっていた ヴァニラには先の見通せないでいた 不意打ちに備え急所を庇うようにクリームを展開させるが魔法の変わりに女の声が聞こえてきた 「戸を閉めて?」 ヴァニラは言われた通りにした 逃げ道なら簡単に作れる 「ようこそ、そして初めまして・・・・でもないわね。こちらにいらっしゃい」 「この蜥蜴を通してみていたのか?」 その場から動かずヴァニラは淡々と訊ねる ここは既に相手の領域、これ以上主導権を奪われるわけには行かない 相手が戦うつもりであると信じ込んでいるヴァニラは臨戦態勢だった 「ええ、それに直接見ることもあったわ。ねぇ、そんなに堅くならないでこっちにいらっしゃいな」 地の利と視角、絶対有利なはずのこの状況で攻撃もせず、誘うような相手の声にヴァニラは漸く疑問を持ち始める 「しかし暗いぞ」 指を弾く音が聞こえた すると部屋の中に置かれたいたロウソクが一本ずつ燈っていく ヴァニラの近くに置かれていたロウソクから順に火は燈り、ベットの傍のロウソクがゴールだった 道のりを照らす街灯のように、ロウソクの灯が浮かんでいる ぼんやりと淡い幻想的な光の中、ベットに腰掛けた褐色の肌に深紅の瞳と頭髪を持つ女の悩ましげな姿があった ベビードールというのだろうか、そういう誘惑するための下着を着けている・・・・ というかそれ以外はなにもつけていない それを見たヴァニラの感想は (・・・・・・・・痴女か?) 冷めていた 何せDIOの配下に扇情的な衣装の女が一人いたうえに食料の女たちも似たり寄ったりで今更動じる事は無かった だが殆ど透けたような生地の下着を持ち上げる盛り上がりには多少驚いたが そのベクトルもルイズと同い年でどうしてここまで違うのかという ルイズが聞いたら激怒するであろうものだった 勿論学園のシステム上同学年であっても年齢は違うのだが それにしてもこの差はないだろう 女はヴァニラの視線を勘違いしたのか微笑み、名乗った 「名乗るのが遅れたけど私の名前はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプトー、キュルケと呼んでくださってけっこうよ?」 名乗る際にクセなのか軽く前髪を掻き揚げるが、その動作すらも計算したように悩ましげな様子を見せる 「ではキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプトー嬢、既にご存知だろうがこのヴァニラ・アイスに何のようだろうか?」 一度聞いた名前を一字一句間違えず返し、軽い皮肉を込めて訊ねる 「あん、つれない人ね。そんなところに突っ立ってないで、いらっしゃいな」 キュルケはヴァニラの問いに答えず色っぽい声で誘う 望む答えが得られず軽い落胆の溜息を吐くとヴァニラは諦めたよう、誘われるままにキュルケの元へ向かった 「座って?」 ヴァニラは言われたとおりにキュルケの隣に腰掛けた 裸に近いキュルケの隣にいても至って平静を保っていたが流石に多少の興味は湧き ・・・・・DIOの姿を思い浮かべると即座に消えた 「改めて聞くが、何の用だ?」 至って平静を保った声でヴァニラが言った 燃えるような赤い髪を優雅に掻き揚げ、キュルケはヴァニラをみつめる ぼんやりとしたロウソクの灯に照らされたキュルケの褐色の肌は野性的な魅力を放ち、ヴァニラ以外の誰かをどうにかしそうになる キュルケは大きく溜息を吐き、そして悩ましげに首を振った。 「あなたは、あたしをはしたない女だとおもうでしょうね」 「まったくだ」 「思われても、しかたがないの。わかる?あたしの二つ名は『微熱』」 「知らん。熱なら水でも被って醒ませ」 突然の口上に呆れたように受け答える 「あたしはね、松明みたいに燃え上がりやすいの。いきなりこんな風にお呼び出ししたりしてしまうの。わかってる、いけないことよ」 「理解していて抑えられないのか、最低だな」 ヴァニラは早く解放されて適当に相槌を打った 正直相手の意図がさっぱり読めない 読めないのが逆に恐怖になりつつある 「でもね、あなたはきっとお許しくださると思うわ」 キュルケは潤んだ瞳でヴァニラを見つめた 確実にヴァニラが言った事を理解していない 「・・・・・・・・何故?」 キュルケはすっとヴァニラの手を握ってきた 一本一本、ヴァニラの手を確かめるようになぞり始めた ヴァニラの背筋に悪寒が走った 「恋してるのよ。あたし。あなたに。恋はまったく、突然ね」 「まったく突然だ。ところで帰っていいか?」 ヴァニラは真顔で切り返すがキュルケの顔は真剣そのものだった 「あなたが、ギーシュを倒した時の姿・・・・。かっこよかったわ。まるで伝説のイーヴァルディの勇者みたいだったわ!あたしね、それを見て痺れたのよ。信じられる!痺れたのよ!情熱!あああ、情熱だわ!」 「・・・・情熱か、で?」 「二つなの『微熱』はつまり情熱なのよ!その日からあたしはぼんやりとマドリガルを綴ったわ。マドリガル、恋歌よ。あなたの所為なのよ、ヴァニラ。あなたが毎晩あたしの夢に出てくるものだから、フレイムをつかって様子を探らせたり・・・・。ほんとうにあたしってばみっともない女だわ。そう思うでしょう?でも、全部あなたの所為なのよ」 ヴァニラはなんと答えればいいのかわからずにじっと座っていた とうか答える答えない以前に言い知れぬ恐怖を感じていた キュルケはヴァニラの沈黙をイエスと受け取ったのか、ゆっくりと目を瞑り唇を近づけてきた 確かにキュルケは魅力的だ カリスマ性こそ比べるべくも無いが女性という点ではDIOより明らかに魅力は上のはずだ、ヴァニラも男である どうせ元に戻る当ても無い、このまま流されてしまうのもありか、などと一瞬浮かぶが・・・・・キュルケの肩を押し戻した なんとなく、悪い予感がした どうして?と言わんばかりの顔でキュルケがヴァニラをみつめる ヴァニラはキュルケから目を離さず 「つまり今までの話を要約するとお前は惚れっぽい」 それは図星のようでキュルケは顔を赤らめる ヴァニラにしては何を今更、といったところだが 「そうね・・・・・。人より、ちょっと恋ッ気は多いのかもしれないわ。でもしかたないじゃない。恋は突然だし・・・・」 キュルケがその台詞を言い終わらぬうちに、窓の外が叩かれた そこには恨めしげに部屋の中を覗く一人のハンサムな男の姿があった 「キュルケ・・・・。待ち合わせの時間に君が来ないから来てみれば・・・・」 「ペリッソン!ええと、二時間後に」 「話が違う!」 ここは三階だがどうやらペリッソンと呼ばれた生徒は魔法で浮いているらしい キュルケは煩そうに胸の谷間に差した派手な魔法の杖を取り上げると窓のほうを見もしないで杖を振る その動きに同じてロウソクの火から炎が大蛇のように伸び、窓ごと男を吹き飛ばした 「まったく、無粋なフクロウね」 ヴァニラはすっかり元のように冷め切った目でその様子をみつめていた 「でね?聞いてる?」 「今のは?」 「彼はただのお友達よ。とにかく今、あたしが一番恋してるのはあなたよ。ヴァニラ」 キュルケはヴァニラに再び唇を近づけた しかしそれを阻むように今度は窓枠が叩かれた 見ると悲しそうな顔で部屋の中を覗き込む精悍な顔立ちの男がいた 「キュルケ!その男は誰だ!今夜は僕と過ごすんじゃなかったのか!」 「スティックス!ええと、四時間後に」 「別けはともかく理由を言えッ!」 怒り狂いながら男は部屋に入ろうとするが再びキュルケが杖を振ると同じようにロウソクの火から生まれた蛇が男を飲み込み、地面に落ち ていった 「・・・・今のも友人か?」 「彼は、友達というよりはただの知り合いね。とにかく時間をあまり無駄にしたくないの。夜が長いなんて誰が言ったのかしら! 瞬きする間に太陽はやってくるじゃないの!」 キュルケはヴァニラに唇を以下略 今度は窓だった壁の穴から悲鳴が聞こえた 既に予想はついていたが、ヴァニラは呆れたように窓の外に目を向ける 窓枠で三人の男が押し合いへし合いしている 三人は同じに同じ台詞を吐いた 「キュルケ!そいつは誰なんだ!恋人はいないって言ったじゃないか!」 「マニカン!エイジャックス!ギムリ!」 今まで出てきた男が全員違うのにヴァニラは感心した (まるでホルホースだな。あいつはきちんと折り合いをつけてそうだが・・・) 「ええと、六時間後に」 キュルケが面倒そうにいうと 「朝だよ!」 三人は仲良く唱和した キュルケはうんざりした声でサラマンダーに命令した 「フレイムー」 きゅるきゅると部屋の隅で寝ていたサラマンダーが起き上がり、三人が押し合っている窓だった穴に向かって炎を吐いた それをもろに浴びた三人は仲良く地面にキッスすべく落下していく 「今のは?」 ヴァニラは分かりきったことを敢えて尋ねた 「さあ?知り合いでも何でもないわ。とにかく!愛してる!」 キュルケはヴァニラの顔を両手で挟むと真っ直ぐに唇を奪おうとする その時、ドアが物凄い勢いで開けられた 正しくは内側に向かって吹き飛ばされた また男か、と思ったら違った ネグリジェ姿で杖を持ったルイズが立っている キュルケはちらりとルイズを見るがドアが吹き飛ばされたにも関わらずそのままヴァニラの唇を奪おうとするが、ルイズが杖を振り上げた のを見てヴァニラがキュルケを突き飛ばす、 それに僅かに一瞬遅れて先程まで二人の顔のあった場所の延長線の壁が爆発した 「キュルケ!」 小さく舌打ちし、艶やかに部屋を照らすロウソクを一本一本忌々しそうに蹴り飛ばしながら、ルイズは二人に近づいた ルイズは怒る男口より先に手が動き、さらに起こると手より足が先に動くのだった ヴァニラに似ている気がするがきっと気のせいだろう キュルケは起き上がりながらルイズに今気づいたように顔を向ける 「取り込み中よ。ヴァリエール」 「ツェルプストー!誰の使い魔に手を出してんのよ!」 ヴァニラは我関せずといった様子で成り行きを見守っている ルイズの鳶色の瞳は爛々と輝き、火のような怒りを表している 「しかたないじゃない。好きになっちゃったんだもん」 キュルケは両手を上げた ヴァニラは二人の間に挟まれ心底面倒臭そうにしている 三人の温度差が物凄く激しい、ひょっとしたら陽炎が出来ているかも知れない 「恋と炎はフォン・ツェルプストーの宿命なのよ。身を焦がす宿命よ。恋の業火で焼かれるなら、あたしの家系は本望なのよ。 あなたが一番ご存知でしょう?」 キュルケは上げた両手を竦めて見せた ルイズの手がわなわなと震える 「きなさいヴァニラ」 ルイズはヴァニラをじろりと睨む それに応じるようにヴァニラは立ち上がり、それを見ていたキュルケが追いすがるように裾を掴む 「あら、お戻りになるの?」 キュルケは悲しそうにヴァニラを見つめる キラキラとした目が、悲しそうに潤む 「・・・・・・」 だがヴァニラは可哀想だけど明日には以下略な目で見るとルイズに促されるままにさっさと歩き出した 部屋に戻ったルイズは身長に内鍵を閉めるとヴァニラに向き直った 「まるでサカリのついた野良犬じゃないの~~~~~~~~~ッ!」 声が震えている ルイズは怒ると口より先に手が動き、手より先に足が動く、もっと怒ると声が震えるのだ その震える声でツェルプストーとヴァリエールの長きにわたる因縁を語り始める ヴァニラは初めは面倒臭そうにしていたがどうやらDIOとジョースター家のような関係なのだと理解した したのだが (それは殆ど逆恨みじゃないのか?) 領土の問題は別として恋人云々の話は明らかに逆恨みだ しかも寝取られたということは開いてのほうが魅力的だったということだろう このヴァニラ、どこまでもドライだった 一頻り文句をぶちまけ、乗馬用の鞭を振るうだけ振るったルイズは肩で息をしながらヴァニラを睨みつけている まだ何か言う事はないかと必死に考えているようだが怒り心頭の頭では何も浮かばないらしい 因みに鞭は振り下ろす度に先端を削り取られ今は持ち手以外残っていなかった、勿論ヴァニラにかすりもしていない 「そうか、わかった。今後気をつけよう」 そのタイミングを見計らったようにヴァニラが頭を下げる それでも何か言おうとするが文句を言い尽くしてしまった後では何も出てこない 「そ、そう。分かればいいのよ!」 仕方なく威厳を保つようにちっぽけな胸をそらしてみせた 「今度から何かあったらきちんと断りなさいよ、脅してもいいわ」 ルイズは物騒なことをぬかしたが、流石にクリームで消し飛ばしたとあっては責任問題としてルイズにも累が及ぶ、暫し考え 「あんたに剣を買ってあげる」 「剣?私には必要ない」 ヴァニラは即答するが 「いいから持ちなさい、あんたいつかあのわけの分からない力で人を殺しそうで見ちゃいられないのよ」 先程隣人の顔面に向けて失敗魔法をぶつけようとした人間の台詞とは思えない 「明日は虚無の曜日だから街に連れてってあげる」 ヴァニラの意思を無視して明日の予定を決めるとルイズはベットに潜り、灯りを消す 「おい、私は中で寝ていいのか?」 「いいわよ。またキュルケに襲われたら大変でしょ」 ヴァニラの問いに面倒臭そうに答えると程無くして静かな寝息を立て始めた 灯りの落ちた部屋で小さく溜息を吐き、ヴァニラは毛布に包まって横になる まだ何か嫌な予感がするが、きっと気のせいだと言い聞かせ、そのまま眠りに落ちた To Be Continued...
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ああ困った困った困った弱った弱った。 「表面的には焦っていても、心の中では常にクール」がモットーのルイズちゃんだけど、こればっかりは本当にまいった。 「おいおい後がつかえてるんだぞ。さっさと終わらせろよゼロのルイズ」 「あなたのせいで私達まで使い魔無しなんてことになったらどうするのよ」 「そうだぞ、くだらないワガママ言うなよ。立派な眼鏡じゃないか」 ここでまたドカン。笑われるかわいそうなわたし。 眼鏡。眼鏡かあ。眼鏡だよねぇ。眼鏡、眼鏡。うううう。ああああ。 くうう……慌てるな。落ち着くんだ。 冷静になるんだルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。名前長っ。 「うるさいわね! あなた達ちょっと黙ってなさいよ!」 とりあえず怒鳴り返すポーズだけはとっておくとして……さてどうする。 今はまだ笑う余裕があるけど、これ以上時間を使えばまわりの空気も悪くなるでしょ。 そうなればわたしが悪者みたくなって、皆に責められる。 この後いまいちな使い魔召喚した子達はきっと 「ルイズの馬鹿が時間使いすぎやがって。おかげで俺までとばっちりさ」 「まったく、ゼロのルイズにも困ったもんだな」 ダメダメダメ。これはダメ。 なんで他人の使い魔までわたしの責任になるのよ。おかしいでしょ。 だいたいここでゴネきって再召喚させてもらうとしても、この眼鏡が出てくるまですでに呪文詠唱十七回。 十八回目も手ごたえ無しで爆発、こりゃ当然失敗したと思ったらそこにはこの眼鏡。 やり直すとしても……まあ、普通に考えて成功する見込み無し。 「さっさと契約しなさい、ミス・ヴァリエール。眼鏡の何が悪いというのかね」 この毛髪ツンドラ地帯、人事だと思っていい加減なこと言ってくれるじゃないの。 「眼鏡は悪くない」 だったらあんたの使い魔にしなさいよザ・眼鏡。 「そろそろあきらめろよゼロのルイズ!」 みんな静かに。考えがまとまらない。笑うなマリコルヌ。肉屋に卸すよ。 グラモンの馬鹿、いちいち隣の縦ロールにささやいてるんじゃない。 グラモンの阿呆、その好奇心丸出しな顔を引っ込めなさい。 うううう。どうしようかなあ。眼鏡で我慢すべきかなあ。嫌だなあ。でも使い魔無しよりは眼鏡かなあ。 フレームをつついてみた。レンズをノックして、蝶番を何回か開閉させてみる。 実体が無かったり、この世界には無い物で作られていたり、わたしに話しかけてきたりすることはない。 まごう事なき、混じりっ気無し、誰が見ても正真正銘、ただの眼鏡だ。 コレ本当に眼鏡以外の何者でもないね。なのにわたしの使い魔だってさ。困ったね。あはははははは。 もうどうにでもなれとダメモトで眼鏡をかけてみた。 お、ちょっとすごいな。かなり遠くの方までしっかり見える。 べつに目ぇ悪いわけじゃないんだけど、それでも効くもんねぇ。 ただ見た目だけじゃなく、実際的なところにも気を配ってるってわけか。 すごいねコレ。眼鏡なんだけどね。あははははははははははははははははははは。 ……なんかもうどうでもよくなってきた。疲れた。 人間であり、貴族でもあるこのわたしが、なぜ眼鏡ごときにここまで気を遣わなければならないのか。 もういいよ。眼鏡眼鏡。みんなのばーかばーか。うんこうんこ。 「ミス・ヴァリエール。気は済んだかのな」 「……はい」 なるだけ情けない顔にはならないよう振り向いたけど、あたしの努力は結局無駄に終わった。 どれだけ頑張ったっていつもこうなる。 もう本当にね。みなさんかんべんしてください。 眼鏡を額の上に押しやって、肉眼で皆を見る。普通だ。 眼鏡を鼻の上に据え付けて、レンズ越しで皆を見る。普通に全裸だ。 お前もうコラいんちき眼鏡いい加減にしなさいよ。 「どうしたのかね?」 「いえ、あの」 「気分でも悪いのかね?」 「あ、ちょ、ちょっと待ってくださいミスタ・コルベール! そこで止まって!」 全裸のまま真顔で近づいてくる人間がいればわたしもビビる。 しかも、その、なんというか、コルベール先生は他の男子に比べて、その……。 ま、まあいいや。意外な人の意外な発見は置いておくとして、問題はこの眼鏡だ。 みんなが「何やってんだこの馬鹿?」って顔でわたしを見ている。 眼鏡をかけると、全裸のみんなが「何やってんだこの馬鹿?」って顔で見ている。馬鹿はあんたらだよ。 何度か繰り返してみたけど、やっぱりこの眼鏡をかけるとおかしなことになる。 これはひょっとして、ただの眼鏡じゃない? それともわたしの頭がおかしくなった? あ、キュルケってばちゃんと下の毛も赤いのね。そりゃそうか。 「ちょっとモンモランシー」 「なによゼロのルイズ」 「あなた、昨日の晩虫に刺されたりしなかった?」 モンモランシーは怪訝な顔で 「何で知ってるの?」 「肩とか?」 「だから何で知ってるのよ」 本物だ……この眼鏡は本物だ。ひょっとしたらわたしはとんでもない物を呼び出してしまったのかもしれないぞ。 あ、キュルケのおっぱいすごい。乳房とかいうべきなのかもしれないけどあえてこう言う。おっぱい。 でかいだけだと思ってたけど大きさだけじゃないわ。大きなおっぱいにありがちな形崩れが全く無い。 トレーニングとかしてんのかな。バストアップの体操とか。 でも努力のしがいもあるよね。あれだけ大きかったらわたしだってするもん。 いいなあキュルケばっかり。おっぱい大きいし、魔法もすごいし。いいなあああ。 「ちょっとルイズ。何よ、人のことじろじろ見て」 「そっちこそ何よキュルケ。なんでわたしがあなたを見るのよ。自意識過剰なんじゃないの」 乳首の色も綺麗な桜色。褐色の肌によく映えること。いいなああああ。
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グリフターズ グリフターズ (扶桑社ミステリー) 題名:グリフターズ 原題:The Grifters (1963) 作者:ジム・トンプスン Jim Tompson 訳者:黒丸 尚 発行:扶桑社ミステリー 1991.09.27 初版 価格:\480 トンプスンの小説の基本的な構図は、まず女ありきではなかろうか。男はたいていの場合トチ狂っているが、その内燃機関を燃え上がらせているのは、たいてい女である。美醜に関わらず、男たちは女という燃料を突っ込まれて暴走を始める。あるいは踊り狂い、落とし穴に向かって死の手に招かれる。たいていはトンプスンの場合、そんな具合だ。 ただし、女はあまり前面に出て来はしない。たいていが引っ込んだままだ。それでいて強烈な印象を残すのが、トンプスンの構図なのだ。作品の重力が向いてゆく方向には、必ずといって言いほど女がいて、彼女次第で作品は無重力状態になることだってある。その場合多くはストーリーが散逸する。思いがけない逸脱を見せることがあり、それは傍からはただの狂気にしか見えない。トンプスンの場合、たいていはそんな具合なのだ。 この作品においてはトンプスンは実に知性レベルを高く保っている。散逸も逸脱もなく、まるで他のきちんとした作家が書いたみたいにプロットが整然と進んでゆく。この本だけを読んでトンプスンを語ろうという輩がいたら、ぼくなら真っ先に逃げ出したくなるだろう。それほど、トンプスン・ワールドからは遠い所を走る、まるで無責任な暴走機関車のような作品に見える。ある意味、相当に抑制の効いた、正直に言えばつまらないプロットだ。 詐欺。それが主題であるにしても、コンゲーム小説とまで偉そうに言うことができない。さほどのトリックが込められている小説でもない。詐欺師という言葉が連想させるほどの着想だってない。あるのは、母と息子のわずか14歳という年の差。母のあまりの若さと美貌。息子の愛人の放つフェロモンの豊かさ。それくらいのものだ。 よくぞこんなものが映画化されたものだと思う。プロデューサーがマーティン・スコセッシだと。なるほど、それなら何となくわからないでもないや。ぼくはこの映画を観たことがない。こんな作品を映画化しただなんて。そういう興味だけでも見る価値があるのかもしれない。 最後の最後まで予定調和のように崩れを見せない、収まりのいい物語。悪女モノとしてはぴか一なのかもしれない。トンプスンにしては異常だ。だが狂気の程合いのなさについてはいつもながらだ。逸脱。過激。それらもいつもながらだ。ただ、全体の調和。よほどトンプスンが安定した気持ちで書いた小説であるのに違いない。『ゲッタウェイ』でも『サヴェッジナイト』でもない。おっと、逸脱の極みにある作品を挙げても仕方がないか。トンプスンと言えども、平均レベルとしては、さほどの断裂を見せているわけではないのだ。だが本書だけを読んで、トンプスンと思われるのは、正直癪である。まあ、そんなところの作品なのだ、本書は。 (2004.04.04)